― 株主優待制度の廃止が度々話題になっていますが、企業側の考え方に変化があるのでしょうか?
高山さん:東京証券取引所の市場区分が変更になったことで、上場基準の一つである「株主数」も変更されました。
東証一部の上場基準は「株主数2,200人以上」でしたが、プライム市場の上場基準は「株主数800人以上」に変更されています。
必要な株主数が大幅に少なくなったことで、個人株主を積極的に集めなくて良くなったことなども廃止の理由として考えられるのでないでしょうか。
※市場区分について、詳しくはこちらの記事もご覧ください
東証の市場区分|再編はどのように投資家に影響するのか
― 上場のための個人株主を増やす施策として、無理をしてまで株主優待制度を続ける必要がなくなったということですね。
高山さん:また、株主優待制度は国内の個人株主を対象にした制度なので、基本的に機関投資家や海外投資家は、受け取れません。「公平性」という意味でも配当金を重視する考え方に変わってきたともいえるのでしょうね。
― 株主優待に力を入れることで、企業側にはデメリットもあるのでしょうか?
高山さん:これまで多くの企業に取材してきましたが、
株主優待に力を入れている企業であればあるほど株主数が増え過ぎて、優待送付のためのコストや準備などの事務負担がかなり大きくなっているようです。
株主優待は最低単元の100株でも受け取れる企業が多いので、株主優待を目的に株を購入する方は小口の投資になりやすいですよね。
― 株主優待がなくなると、企業の負担は減るということですね
高山さん:そうですね。
株主優待制度の廃止によって、企業側のコスト削減や事務作業の軽減につながります。その分注力している事業に人やお金を投資したり、配当という形で還元したりといったことにもつながりますよね。
― 株主優待廃止の流れは続くと思われますか?
高山さん:私が株主優待をテーマとした取材をしている中では、株主のためにと企業を上げて取り組まれているところもある一方、「株主優待を廃止します」とか「縮小する予定です」とおっしゃる企業もやはり増えています。今後も株主優待制度を廃止する企業は増えるかもしれませんね。