【お金の専門家が独自の目線で解説】株式投資と配当金の魅力を理解し、新しい世界への扉を開こう!
企業から株主である投資家へ配られる「配当金」。雑誌やWebメディア等では“夢の配当金生活”や“高配当銘柄ベスト50!”といったキャッチーな見出しを目にしますよね。お金の専門家から見た株式投資と配当金の魅力とは何なのでしょうか?
今回お話を伺ったのは...
頼藤 太希(よりふじ たいき)さん:株式会社Money&You代表取締役社長、中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、アメリカンファミリー生命保険会社(アフラック)にて資産運用リスク管理業務に6年間携わる。2015年に(株)Money&Youを創業。月400万PV超のお金に関する情報サイト『
Mocha(モカ)』の運営。『1日1分読むだけで身につくお金大全100』(自由国民社)や『マンガと図解 はじめてのFIRE』(宝島社)など著書多数。
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頼藤太希@お金の専門家/マネーコンサルタント
「株式投資と配当金の魅力」をテーマに、ファイナンシャルプランナーの頼藤 太希(よりふじ たいき)さんにお話を伺いました。投資の意義や銘柄の選び方から、株式投資と配当金の魅力について幅広く解説いただきました。
配当金の魅力は「不労所得」。ただし、投資の意義も忘れずに
― いきなりですが、配当金の魅力は何でしょうか?
頼藤さん:ズバリ、不労所得です。不労所得の王道は不動産投資による賃貸収入ですが、資金力やローンを借りるための信用力が必要だったりと、誰でもできるわけではありません。しかし、配当金を分配している銘柄への株式投資であれば、1株と少額から投資が可能な銘柄もあるので誰でも簡単に不労所得を得ることができます。
― 不労所得…魅力的な言葉ですね。
頼藤さん:そうですね。安く買って高く売る“売買益(キャピタルゲイン)”は誰もが得られるわけではありませんが、配当金であれば株式を保有することで誰でも得ることができます。
ただし、特に投資初心者の方が配当金目的で株式投資をする場合には3つのポイントを押さえる必要があると考えます。
<配当金目的で株式投資をする3つのポイント>
1. 投資の意義
2. 銘柄の選び方
3. 配当金の使い道
― それでは3つのポイントについて順にお聞きしたいと思います。まずは「①投資の意義」から教えてください。
頼藤さん:配当金目的でも売買益目的でも、株式投資をすること自体が“世の中に貢献する行為”です。“自分のお金で世の中に貢献できている”という投資の意義は意識してほしいですね。
― 投資が“世の中に貢献する行為”とはどういうことでしょうか。
頼藤さん:自分の投資したお金が企業の力となり、企業はより良い社会にするために商品・サービスを提供する。その商品・サービスを消費者が「ありがとう」という気持ちで購入して、さらに企業の成長に繋がっていく…これが、投資で“世の中に貢献する行為”という意味です。投資はただ単にお金を増やすための行為ではないんですね。
― 投資というと、儲かるか儲からないかに注目してしまいますが、“世の中への貢献”という側面もあるんですね。
頼藤さん:そうです。 配当金目的で株式投資をしたは良いものの、株価が下がって、結果的に損をしてしまう可能性もあります。儲かるか儲からないかだけの視点しか持っていないと、株価が暴落したらすぐに投資を止めてしまうでしょう。
しかし、投資は“世の中に貢献する行為”です。自分の投資が企業ひいては世の中に貢献して経済成長を促していると視野を広げて考えられると、儲かるかどうか以外の意義を投資に見出すことができるはずです。
銘柄選びは必ず「業界の将来性」と「売上高・営業利益」をチェック!
― 続いて「②銘柄の選び方」について、配当金目的で株式投資をする場合、何に着目して銘柄を選べば良いのでしょうか?
頼藤さん:ズバリ、「業界の将来性」と「業績」です。
― なぜ「業界の将来性」と「業績」をチェックした方が良いのでしょうか?
頼藤さん:“将来性の高い業界にいる+業績が右肩上がりである企業”であれば、株価が上がり、配当金も分配し続け、増配する可能性も高いからです。
逆に、“業界の将来性がない+業績が右肩下がりである企業”は、例え今は配当利回り(※)が高くても、株価が下落し、将来的に減配もしくは無配(※※)になるリスクが高くなります。「配当金目的で配当利回りの高い銘柄を買ったのに、株価が下がって含み損が増え、配当金も貰えなくなる」なんて事態もあり得るのです。
※配当利回りとは、株価に対する1株あたり配当金の割合のこと。配当利回りが高ければ高いほど、現在の株価に対しての配当金の割合が大きくなる
※※減配もしくは無配について、企業が配当金を減らすことを「減配」、配当金を無くすことを「無配」という
― 「業界の将来性」と「業績」のチェックは重要ですね。現在、頼藤さんはどの業界の将来性に期待していますか?
頼藤さん:医療・健康・ヘルスケア業界や美容業界は今後も長く拡大していくと考えています。世界的に高齢化が進んでいる現在、多くの高齢者が健康や美容にお金を使っています。今後も高齢化が進むにつれ、自然と需要は増していくことでしょう。
一方、例えばゲーム業界はヒット作であってもいずれブームが去ることから、長続きはしない業界の一つと考えます。そのため、ゲーム業界の銘柄は短期的な売買に向いていると言えるでしょう。
― 「業績」はどのように確認するのでしょうか?
頼藤さん:企業のIR情報や会社四季報の情報、株探(かぶたん)などの株式情報サイトで確認しましょう。具体的には、過去3〜5年と、将来2期分予想の売上高と営業利益が右肩上がりかどうかを見ましょう。
※上記は株式会社ベネフィットワンのIR情報。過去5期分の業績を掲載している。過去の業績は各社のIR情報でチェックすることができる
― 頼藤さんご自身は配当金目的でどのような銘柄に株式投資をしていますか?
頼藤さん:長年連続増配をしている「P&G」や「ジョンソン・エンド・ジョンソン」、「コカ・コーラ」など、米国株に投資をしています。
これらの企業は「業績」が安定しており、増配し続けています。配当利回りも悪くありません。また、「業界の将来性」も明るいと考えているので、今後も積み立てていきたいです。
― 米国株を中心に投資をされているのですね。
頼藤さん:そうですね。ただ、日本株でも日本一の連続増配記録を更新中の「花王(4452)」や、インフラ株として安定した業績が見込める「ソフトバンク(9434)」は高配当銘柄としてよく紹介されますが、これらに配当金目的で株式投資をしている人がたくさんいますよ。
― そのほか、配当金目的で銘柄を選ぶにあたって注意すべきことはありますか?
頼藤さん:業界・地域の異なる複数の銘柄を選んで投資をすること、つまり「分散投資」をすることです。1つの業界・地域・銘柄に集中投資をすると、その業界・地域・銘柄が暴落してしまうと、大きな損失を抱えてしまいます。
「この銘柄なら大丈夫!」と思っても、ディフェンシブかつ高配当銘柄で有名だった「東京電力(9501)」のような例もありますし、絶対はありません。分散投資をしておけば、例え株価が暴落した業界・地域・銘柄があっても、他の業界・地域・銘柄が損失をカバーしてくれる可能性があり、リスクヘッジになります。
※あくまでも頼藤さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、資本航道株式会社が個別企業を紹介し、特定の個別銘柄を推奨しまたは取引を誘引するものではありません。また、引用の掲載資料は当該企業が作成したものであり、資本航道株式会社が情報の正確性を保証するものではありません。
配当金を再投資して、お金が増えるスピードを上げよう!
― 最後に「③配当金の使い道」について、頼藤さんは配当金をどのように使った方が良いと考えますか?
頼藤さん:もちろん、配当金は投資の目的に沿って好きなように使っていただいて構いません。ただし、資産形成期においては配当金を「再投資」に回すことをおすすめします。
― なぜ配当金を再投資した方が良いのでしょうか?
頼藤さん:複利効果(※)を活かせるからです。そもそもお金が増えていくための秘訣は複利効果にあります。配当金を再投資することで、複利効果によりお金の増えるスピードがどんどん上がっていくんですね。
(株)Money&You作成
上記は「複利」と「(収益を再投資に回さない)単利」のパフォーマンスをグラフにしたもの。投資期間が長くなるほど、複利と単利の差が大きくなることがわかる
※複利効果とは、運用で得られた収益を投資することで、運用金額が増え、その結果リターンも増えていく効果のこと
もし毎月5万円を積み立てていくとすると…
― 配当金を再投資するにあたって、気をつけておくべきポイントはありますか?
頼藤さん:2点あります。1点目は「売るタイミングを考えておくこと」、2点目は「税金についても考えておくこと」です。
― 1点目の「売るタイミングを考えておくこと」について、配当金目的で投資をした株を売却するのはどういう状況下なのでしょうか?
頼藤さん:長期的に企業の業績が悪くなるようであれば、株価下落による資産の減少及び減配・無配のリスクが高くなるため、売却を考えましょう。ただし、業績の悪化が一時的なものと判断した場合は、必ずしも売却する必要はありません。
― 業績の悪化が一時的なのか長期的なのか、どのように判断すれば良いでしょうか?
頼藤さん:業界全体の見通しを推測して判断します。例えば「コロナ禍及びアフターコロナで厳しい業界はどこだろう?観光業界や航空業界は厳しいかな?」などと自分で考えてみて、もし“厳しい”と判断すれば売却も考えます。
また、企業がリリースするIR情報には業績悪化が一時的な要因によるものなのか長期的な要因なのかを説明していますので、IR情報も参考にしても良いでしょう。
ANAホールディングス株式会社の第71期(2020年4月から2021年3月)の第1四半期報告書では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、長期的に厳しい状況が続くであろうことが書かれている
― 2点目、「税金についても考えておくこと」について教えてください。
頼藤さん:配当金には20.315%の税金がかかります。仮に企業から年間3万円の配当金が支払われても、手取りは約2万4,000円です。税金の割合はかなり大きいんですよね。もちろん税金は配当金だけでなく売買益にもかかりますが、配当金は受け取る度(※)にかかってしまいます。
※日本株は年2回、米国株は年4回配当金を支払う企業が多い
― 配当金を受け取る度に税金がかかってしまうのですね。
頼藤さん:もちろん、配当金には“不労所得”というメリットがあり、魅力的な面もありますけどね。配当金に税金がかからない非課税制度「一般NISA」を利用して株を買ったり、または「つみたてNISA」を利用して投資信託へ投資をしたりして、運用で増やした資金で高配当銘柄に投資をしたりと工夫してみてはいかがでしょうか。
意識して行動することで、新たな世界への扉を開く
― 今回は「配当金の魅力」をテーマにさまざまなご質問をさせていただきました。最後に投資に興味を持っている読者の皆さまへメッセージをお願いします。
頼藤さん:「実際に行動しましょう」ということをお伝えしたいです。まだ投資をしていない方は、口座開設をして1銘柄だけ、1株だけ買ってみる。つみたてNISAをしたいと考えている人は、つみたてNISAの口座を開き、投資信託を選んで積立設定をする。まずは行動することが大切です。
<株式投資をする上で意識したい3つのポイントのおさらい!>
1. 「投資の意義」は"世の中に貢献している"という楽しみを感じる
2. 「銘柄の選び方」は業績の将来性と業績に着目する
3. 「配当金の使い道」は再投資に回す
人間は、意識していないことに関する情報は素通りする傾向があります。例えば、「ドラッグストアに行こう」と目的を持って行動すると、いつも歩いている道でも「あ、ここにあったんだ」とドラッグストアがあったことに気づいた経験はありませんか。
自分が意識するかしないかで、見える情報は変わってくるんです。投資も同じで、投資をしていなければ経済ニュースや株価の動向についてチェックすることはほとんどないでしょう。しかし、実際に投資を行っていると、経済・政治ニュースをチェックするようになったり、企業について調べるようになったりと、新しい世界が開けてきます。その結果、どんどん情報収集ができ、投資についての知識が自然と身に付いてきます。
この記事を読んだ読者の皆さまには、実際に投資をするための行動を起こしてほしいです。そして、新しい世界への扉を開いてください。
■参考一覧
ANAホールディングス株式会社|第71期(2020年4月から2021年3月)第1四半期報告書
株式会社ベネフィット・ワン|業績ハイライト
本記事に掲載されている全ての情報は、2022年2月21日時点の情報に基づきます。