本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
Introduction
ここのところ、「高価買取」と書かれた新聞のチラシ広告を見かけることが増えました。ブランド品の時計やバッグを高価格で買い取ってくれるとのこと。残念ながらわが家には売れそうなブランド品がないので、お世話になることはありませんが、高く買い取ってもそれ以上に高く売れるということなのでしょう。
そういえば先日友人から、CHANELのバッグは、中古になっても高く売れるので、消費ではなく投資だと聞きました。だとしたらたしかに、現金で寝かせているより、ブランド品を買ったほうが、将来の資産は増えることになります。中古でも価値が下がらない、もしくは上がるようなリセールバリューが高いものを買うのは、まさに投資家目線の行動といえます。
それにしてもここ最近のブランド品の値上がりは目を見張るものがあります。世界的なインフレや円安の影響を受け、この数年で1.5倍くらい値上がりした印象です。その影響もあってリユース市場は活況です。業界紙「リサイクル通信」によるとリユース業界の市場規模は年々拡大しており、2022年は前年比7%増の2.9兆円でした。今後2025年には3.5兆円まで拡大すると予想されています。
若い世代のエコ意識の高さも後押し、拡大するリユース市場
リユース市場の拡大にはメルカリの登場も一役買っていると思います。それ以前にもヤフーオークション(通称・ヤフオク)があり、わたしも子供の服を売買していましたが、その作業がめんどくさく、いつの間にか遠のいていました。今は、娘がわたしの読み終わった本や、着なくなった服を売って、自分のものを何か買っていますが、昔に比べるとかなり手間がかからなくなっています。
また、彼女を含めZ世代は、エコ意識も高いため、新しいものを次々買うより、リユースでモノを回すほうがしっくりくるというのもあるようです。若い世代に限らず、モノを“捨てる”ことに罪悪感を覚える人は多く、“捨てる”以外の選択肢として、リユース市場へ回すという選択肢が一般的になりました。
海外旅行者からの人気も追い風…国内の業界No.1・コメ兵
リユース市場の拡大にともない、関連企業の業績は好調です。まずは、もっとも恩恵を受けている企業としてコメ兵ホールディングス(2780)が挙げられます。ブランドリユースでは国内トップ。圧倒的な買取力で、人気商品の在庫を欠かさず、消費者からの信頼をキープしています。今年の11月には、渋谷に買い取り機能併設の大型店を開業し、ますます勢いをつけています。
日本のリユースは状態がよいということで、海外旅行者からの人気も高く、さらなる追い風になっています。とくにインバウンドでの需要が旺盛なバッグの買取に力を入れているとか。ブランドのバッグってほんとお高いですもんね。海外の方からすると円安も相まって、日本で売られているリユース品はものすごくお買い得に見えるのでしょう。
ブランドリユースでもっとも重要なのは、それが本物かどうか、です。意図的でなかったとしても偽物を売ってしまえば、致命傷となります。ブランド品の真贋を見分けるには、熟練の技が必要とされていますが、コメ兵ではAIで模倣品の診断を行い、その判定精度は最大99%だそうです。そういった技術は、ある程度規模が大きい企業でないと取り込むことができないので、そういった意味でも業界No.1のコメ兵に優位性があります。
今期の業績は、過去最高売上、過去最高益を更新予想です。株価は今年の8月に6,390円の上場来高値をつけましたが、その後は、ずるずると下げ続け、12月1日には今年の最安値3,880円をつけています。業績が悪化したわけではありませんので、そろそろまた買い戻されてもよいのではと期待しています。
ビデオレンタルからの業種変更!急伸するゲオ
もう1社、コメ兵とは毛色が違いますが、リユース市場で存在感を出しているのがゲオホールディングス(2681)です。ゲオといえば、ビデオレンタルのイメージが強いのですが、じつは今や、売上比率の53%がリユース業と、急激に業変しています。とくに急伸しているのは、リユース衣料・服飾雑貨の「セカンドストリート」で、現在国内823店舗、海外71店舗を展開中。
節約志向が高まる中、お手頃価格のリユース衣料は人気です。とくにセカンドストリートは、ファッションのトレンドに沿った商品を提供しているため、若者から支持されています。ゲオも、今期は過去最高売上を更新するでしょう。
勝ち組を見分ける!リユース業界分析のポイント
ところで、ブランド品をメインに扱うコメ兵と、カジュアルファッションをメインに取り扱うゲオホールディングス、どちらのほうが儲かりやすいと思いますか?
なんとなくのイメージでは、高級品を扱うコメ兵だと思いませんか? ところが実際には、カジュアル衣料のリユースのほうが利益率が高いため、ゲオホールディングスのほうが儲かりやすいのです。その理由は、ブランド品は希少であればあるほど買取価格が高くなることや、保管や品質維持にコストがかかることが挙げられます。新品の市場だと、高価格帯のほうが利益率が高いことがほとんどですが、その常識に囚われているとリユース業界の分析を見誤ります。
リユース市場の拡大に寄与したメルカリは、引き続き取扱高や利用者数は右肩上がりであるものの、米国でのフリマが苦戦しており、店舗系のリユース企業に比べると見劣りがします。CtoCビジネスだと、どうしても商品の信頼性や取引の質にムラができるという消費者の不満があります。リオープンも相まって、実際に手に取って確認できる店舗系に軍配が上がっているようです。
まとめ
世界中でSDGsへの関心が高まる中、リユースビジネスはますます拡大していくと思われます。
誰かが使ったものに嫌悪感を覚える世界から、誰かが使ったものを大切に引き継ぐ世界へ、持続可能な環境型世界へ世の中が変革しています。その変革がビジネスチャンスとなるリユースは、2024年も引き続き注目したい投資テーマです。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2023年12月14日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、資本航道株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
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