本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
Introduction
なぜだか日本株は強い。アメリカ株が下がっても日本株は下がらない。じわりじわりと上昇して、気づけばTOPIXは5月15日(月)に33年ぶりの高値更新、日経平均株価も1年8ヶ月ぶりに3万円台を回復しました。
好調の理由としては、著名投資家のバフェット氏が日本株は有望と発言したことや、PBR1倍割れ企業がその是正のため自社株買いを大量に発表したことなどが挙げられています。ただ、そんな理由は、株式投資をしない人にとっては、ピンと来ないのではないでしょうか?
2020年の年末、コロナによる経済活動の規制によって景気はあまりよくありませんでした。それでも株価はぐいぐい上昇し、株式投資をまったくしない父から「なんでこんなときに株は上がるの?」と、聞かれたことがあります。
株式市場にはそういった実態と株価が乖離することがよくありますが、今回の株価上昇は、株式投資をしない人でも「そうでしょうね」と思える肌感がともなったものです。
こんなところにも外国人観光客の姿が!
今年のゴールデンウィークは、久しぶりに大手を振ってのお出かけが許されました。老若男女問わず、旅行やレジャーを楽しんだ人は多いのではないでしょうか?
わたしは、娘たちを連れて、富士急行の連結子会社が運営する相模湖トレジャーフォレストに行きました。お目当ては、すみっコぐらしとコラボレーションしたイルミネーション(5月7日で終了)です。施設内には、アスレチックや絶叫系のアトラクションなどもあり、家族連れで賑わっており、ちょっと休みたいと思っても気軽に座れる場所が見当たらないほどでした。
・高尾山には1年前にはいなかった外国人の方がいっぱい!
・車がないと来れないような地元のお祭りに外国人が来ていた!
・京都の嵐電の中は、自分と友人以外は外国人だった!
・しまなみ街道を外国人がサイクリングしてました!
とにかく「こんなところにも??」といった場所にも訪日外国人の姿が見られたようです。もちろん海外からのお客様に加えて、わたしたち日本人も浮かれてお出かけしていますので、どこにいっても人の波。ですが、うんざりしつつも、なんとなくうれしい気持ちがしたのは、景気のよさを肌で感じるからでしょうか。来る来ると言われていたリオープン(経済再開)景気が、ほんとにやってきたのです!
肌感がうそでないと指数が続々
景気の”気”は気持ちの”気”ですから、「景気がいいなー」と肌で感じるのはたいてい間違っていないのですが、それでは心もとない感じもします。株式投資においては「なんとなくいい気がする」では投資根拠としては甘すぎます。そこで、いくつか景気指数と呼ばれるものを確認しましょう。
・景気ウォッチャー調査
タクシー運転手、百貨店の販売員、旅行代理店の従業員など景気に敏感な職業についている人に、景気の現状と将来の見通しについてアンケート調査をしたもの。株価の先行指標としても機能します。
直近4月の調査では現況54.6、先行き55.7とどちらも好不況の境目とされる50を上回り、前月からも上回っています。判断理由としては「コロナ禍前の売上にほぼ回復するなど、ここ数年の動きとは明らかに違う雰囲気がある」などが挙げられていました。
・GDP(国内総生産)
世界中でいちばん有名な経済指標。国内で生み出された財やサービスの総額を示します。対象期間から発表まで1ヶ月半ほどの時差があるため、景気のバックミラーとも言われます。
5月17日に発表された1-3月期の速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.4%増、年率換算で1.6%と3四半期ぶりのプラスになりました。とくにGDPの過半数を占める個人消費で強い数字が出ていました。
・訪日外国人数
コロナで一気に消滅したインバウンド消費の戻りを確認するための指標。5月17日に発表された4月の訪日外国人客数は194万9100人(推計)で、新型コロナウイルス流行前の19年同月比ではまだ7割程度ですが、22年10月の個人旅⾏再開以降では最高を記録しました。
中国からの訪日数がいまだ2割程度しか回復していませんので、日本行きの海外旅行に関する制限措置や帰国時の入国制限が撤廃されれば、一気に増加しそうです。
このように肌感だけでなく数字でも日本の景気、とくに個人消費がよいことが実証されているので、株価上昇に首を傾げる必要はないのです。
じつは問題点も
コロナで苦しんだ飲食店、小売店、旅館、ホテルなど、お客様が戻ってくるのはうれしい反面、困っていることもあります。コロナ禍に人材を削減したこともあり、急激なお客様の戻りに、従業員などの人手が足りないのです。そのため、観光地のお土産屋さんでは、早めの店じまいをするところも多いそう。また旅館やホテルでは、予約のリクエストはあるにもかかわらず、稼働率を抑えて運営しているとか。
そんなこともあり、リオープン関連企業でも、人手不足をうまくこなして業績を伸ばしていけるかどうかで明暗が分かれます。
優待目的で保有していた株が1.5倍に値上がり
話は変わりますが、値上がり益をまったく期待せず、優待目的だけで保有していた銘柄が、気づくと1.5倍まで上昇していました。高級レストランやホテルを運営するひらまつ(2764)です。5月12日に2024年3月期の通期予想を発表。4期続いた赤字から、やっとの黒字転換見込みです。それを期待してか、決算発表前から株価はぐいぐい上昇。決算発表後はいったん株価が利益確定売りで下げましたが、5月16日に発表された4月の全社売上高は前年同月比25.8%増と好調が確認されたため、ふたたび株価は上昇しています。
リリースによると、4月に宿泊したゲストの内 25%(室数ベース)がインバウンドによる海外ゲストで、稼働率が前年同月比で3倍となった京都のホテルでは、宿泊客の半数以上が海外ゲストだったとあります。ひらまつのホテルは、お安い部屋でも1泊6万円台後半、10万円以上のお部屋も数多く用意されており、正直、気軽に泊まれる感じではないですが、海外富裕層には非常に人気があるようです。
さて、ここに株式投資のヒントがあります。稼働率を抑えても単価を高くできれば、売上は伸びます。値上げしても選ばれる付加価値の高い高級サービスを提供する企業は、人手不足のマイナスを相殺できるのです。
ちなみに訪日外国人の一人当たりの経済効果は平均15万円程度、それが富裕層になると100万円以上に跳ね上がるというのだから、おもてなしの国日本で、取り込まない手はありません。正にひらまつは、そういった富裕層の旅行者を取り込みつつあるようです。
もうひとつ、富裕層ビジネスで顕著に業績を回復しているのは、百貨店です。5月9日に2023年3月期の決算発表をした三越伊勢丹ホールディングスは、営業利益296億と前期比5倍と堅調でした。その理由に「個人外商の大幅伸長」が上げられています。外商…….。百貨店の方がみずから商品を持参して、あれやこれやとおすすめしてくださるというアレです。もちろんわたしは経験したことありません。年間でそれ相応の金額のお買い物をする人のみに与えられる特権でしょう。その外商が今、百貨店の売上を牽引しているのですから、まさに富裕層ビジネスバンザイ!
リオープンで小売、飲食、レジャーなどそれなりの賑わいはあるものの、投資対象としては、富裕層を取り込める企業に絞るのがよさそうです。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2023年5月26日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、資本航道株式会社が個別企業の紹介、特定の個別銘柄の推奨、または取引の勧誘をするものではありません。
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