本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
Introduction
四季報新春号が発売されてから約1ヶ月が経ちました。年末年始のお休みを挟んでいるため、四季報ラバーの皆さんは、この期間にじっくり読み込んだことと思います。わたしは、発売直後にさらっと全銘柄に目を通し、その後、記事欄をじっくり読み込むという作業を行いました。
じつは新春号は、四季報4冊(新春号・春号・夏号・秋号)の中で、いちばんお宝銘柄を発見しづらい号だと思います。というのも、日本でもっとも多い3月決算の銘柄は、今期の終盤に差し掛かっており、投資家の目線は新年度に向かっています。今期、好調な銘柄は、おおむね秋号までに上方修正や、四季報予想の増額が行われており、新春号では今期における新たなサプライズはあまりありません。
四季報の欄外には、今期予想の営業利益が、前号から増額していれば上向きの矢印が表記されますが、新春号はその数が少なめです。この矢印をお宝銘柄発見の手がかりにしている個人投資家さんは多いと思いますが、新春号ではあまり頼りにならないのです。
新春号ではここをチェック!お宝銘柄を見つけるポイント
わたしは、来期予想の変化に注目しています。3月決算銘柄なら、2025年3月期です。前号に比べて、新年度予想が大きく増額されている銘柄は、来期も好調が継続すると予想できます。今期がいくら好調でも、来期の業績の伸びが鈍化すれば、株価は低迷します。逆に、伸び率が拡大するようであれば、株価の上昇に勢いがつく可能性が高くなります。
ただ、来期予想の前号からの変化は、欄外の矢印には反映されませんので、地道に業績欄の数字を前号と比べてみるしかありません。このひと手間を惜しまないことで、他の人よりも一足先に来年度のスター銘柄を発見できるのです。
「来期の営業利益予想」で見る注目銘柄
来期の営業利益予想が増額されていた銘柄で、わたしがチェックしたものをいくつか紹介します。
ライフドリンクカンパニー(2585)
水、お茶、炭酸水の製造販売企業。少品種大量生産が特長で、節約志向も相まって、スーパーのPB向けが好調です。前号である秋号の25年3月期予想は43億円でしたが、新年号では49億円へ13%の増額です。
JVCケンウッド(6632)
昭和世代にはお馴染みのAV機器の日本ビクターと、音響機器のケンウッドが経営統合してできた電気機器メーカー。現在はカーナビやカーオーディオが主軸ですが、米国で無線機器が急拡大中。秋号の25年3月期予想は146億円でしたが、新年号では170億円と16%増額修正されています。
じつは秋号では、24年3月期の営業利益は164億円、25年3月期は146億円と減益予想でした。それが、新春号で一転増益予想に。これはインパクトがあります。ただ、今期予想の変化を反映する欄外の矢印は、横向きで“前号並み”となっているので、このサプライズに気づいた読者は少ないのではないでしょうか?
2月決算企業にも新年度予想がこっそり増額されている銘柄がありました。
アダストリア(2685)
「グローバルワーク」「ローリーズファーム」「ニコアンド」などカジュアルアパレルブランドを展開しています。秋号では25年度の営業利益予想165億円に対して、新年号では205億円と25%近く増額されています。来年度は雑貨業態の出店を軸に成長拡大するようです。
DDグループ(3073)
ダーツやビリヤードなどが楽しめるアミューズメント要素の強い飲食店、ホテルなどを運営。秋号では、25年度の営業利益予想26.5億円に対して、新年号では34億円とこちらも28%の増額修正です。リオープンによる業績回復はそろそろ一服かと思いましたが、来年度も飛躍するとは驚きです。
月足チャートから見つけた好調銘柄の共通点
四季報の上部には、月足チャートが掲載されています。まず最初は、この月足チャートを確認し、上昇トレンドのものを中心にチェックしていきます。今回の新年号では、今までノーチェックでしたが、チャートの美しさが気になって記事欄などを読んでみたら、驚いたことに共通点がありました。もったいぶらずにお伝えすると「インド」です。
ここのところ、際立って経済成長がめざましいインドは、株式市場でも注目のテーマです。わたしは、インド株指数に連動するETFを2022年から保有していますが、順調に右肩上がりで上昇しています。
インドの経済成長の背景には、人口増加が続いており、中国を抜いて世界一になったこと、モディ首相によるメイドインインディア政策による製造業の成長、優秀なIT人材が豊富であることなどが挙げられます。経済的地位が低下しつつある日本から見ると、キラキラ眩しい要素がてんこ盛りで、日本企業がその成長に乗っかろうと考えるのは当然といえば当然です。
今までは、インド市場そのものにベットしていましたが、今年は、インド関連の日本株にフォーカスするのもおもしろいと感じます。
今後の成長に期待!「インド」関連銘柄
せっかくなので付箋を貼ったインド関連銘柄を紹介します。
ダイセル(4202)
車の部品などで使われる高機能樹脂が主軸の化学メーカー。記事欄には堂々の「インド」という見出し。エアバック部品はインド拠点が23年10月に生産開始とあります。今期(24年)3月期は、第2四半期決算発表のタイミングで、通期予想を上方修正、増配も同時に発表しています。
リックス(7525)
鉄鋼、自動車、電子用ポンプなど産業機械・機器メーカー商社。こちらも見出しに「インド」の文字。カルナータカ州に回転継ぎ手や浮上油回収装置を製造する子会社を23年末に設立とのこと。月足チャートは惚れ惚れする上昇トレンドとなっています。
三光合成(7888)
自動車内外装軸に、樹脂部品を金型設計・製作から一貫製造。じつは四季報では、前号比減額、会社比弱気と不本意なマークがついています。ところが、1月11日に発表された第2四半期決算が非常に好調だったため、翌営業日の株価はストップ高となりました。これは四季報記者さんも想定外だったのかもしれません。この銘柄の記事欄には「インド」の文字はありませんが、特色欄に「インド生産拡大志向」とあります。
かゆいところに手が届く特集企画
四季報が、投資家の心をホールドして離さない理由のひとつに、かゆいところに手が届く特集企画にあります。毎号、そのとき市場が意識している指標を取り上げてくれます。
新年号では「DOE」。DOEは、ここ最近、急激に目にすることが増えた指標ですが、株主資本配当率を表しています。これは、企業が、株主から集めた株主資本のうちどれくらい配当に回しているかを表しています。
今までは、純利益のうちどれくらいを配当に回すかを表す「配当性向」が目安とされていました。ただ、単年度に稼いだ利益を基準にする配当性向は、純利益の変動が大きい場合、配当金額も不安定になります。一方、株主資本は比較的安定しているため、配当金のブレが少なく長期で配当金を目的に投資をする投資家にとってはより参考になる数値です。最近は、企業自らDOEを発表することも増えましたが、まだまだ一般的ではありません。
そこで、四季報が全銘柄のDOEを表記してくれているのは、まさに「神」特集と言えます。NISAで高配当株に投資を考えている人にとっては、非常に参考になると思います。
まとめ
四季報を読むのはハードルが高いと考えている人も多いのではないでしょうか。
ここからなんとしても上がる銘柄を見つけてやろうと意気込んでいると、かえって何を選んでいいか分からなくなります。もっと気楽に、美容院に置いてある雑誌を読むような感じで、ペラペラめくってみるだけでも十分です。そこから気になるレストランを見つけるような感じで、気になる銘柄を見つけたら、ホームページを訪れたり、口コミを調べてみたりと気楽に付き合ってみてください。それを毎号続けているだけで、銘柄選びの目利きになれると思います。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2024年1月18日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、資本航道株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
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