本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
Introduction
ひと昔前のアニメは、「オタク」といった一部の熱狂的な人たちの世界だと思われていましたが、今や日本のアニメは国際的な人気コンテンツとなっています。2023年12月に、一般社団法人日本動画協会が発表した2022年の日本アニメ市場規模(国内と海外の消費金額)は、2兆9,227億円。前年比で6.8%増と、10年前の2012年から比べると2倍以上の成長っぷりです。
国内では、推し活が市民権を得たことで、堂々とアニメ好きを公言する人も増えており、アニメ人気は不動のものとなりつつありますが、海外での伸びはさらに目を見張るものがあります。同じく日本動画協会の調査では、2012年の海外市場は2,408億円でしたが、2022年はなんと1兆4,592億円! 10年で6倍に拡大しています。
急激に日本のアニメが海外で人気を博した理由のひとつに、NetflixやAmazonプライムなどのストリーミングサービスで、日本のアニメが世界中に配信されたことが挙げられます。日本のアニメは、細部にまでこだわったアートワークで、その繊細な美しさは、海外で高く評価されています。
たとえば、2023年に公開された宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』は、公開された週末に北米興行ランキングで1位となり、これまで米国で公開されたジブリ作品の中でもっともヒットしています。そして、ご存じのとおりアメリカ映画界では最高の栄誉とされるアカデミー賞の長編アニメーション賞に選ばれました。そのほかにも、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞でもアニメ映画賞を受賞しており、じつは日本よりも海外での人気のほうが高いくらいです。
そのほか『すずめの戸締まり』と『THE FIRST SLAM DUNK』は中国や韓国で大ヒット。SNSでこれらの作品について熱く語る投稿をしばしば目にします。また、『【推しの子】』の主題歌・YOASOBIの『アイドル』は、ビルボード・グローバル チャート(Excl. U.S.)1位を獲得するといった快挙も遂げています。とにかく、かつてないほど日本のアニメが来てる!ことは間違いありません。
海外に市場を拡大する「アニメ御三家」
海外で日本のアニメの認知度が高まったことで、アニメ好きの外国人旅行客も爆増しています。先日、旅行した北海道では、カプセルトイがズラリと並ぶ店舗がアーケードの商店街にいくつもあり、外国人旅行客がガチャガチャしておりました。秋葉原や池袋には、フィギュアを求める外国人旅行客がひっきりなしに訪れています。となると、やはりアニメ関連株が気になるところです。
アニメ関連で、真っ先に挙げられる御三家といえば東映アニメーション(4816)、バンダイナムコホールディングス(7832)、カプコン(9697)です。
東映アニメーションは、言わずと知れた『ドラゴンボール』や『ONE PIECE(ワンピース)』など人気のアニメ作品を多数制作しています。Netflixで配信された実写版の『ONE PIECE』もすさまじいほどの人気。25年3月期は、『ドラゴンボール』の新シリーズ始動で活気づきそうです。海外売上比率は55%と国内を上回っており、今後の海外での展開が気になるところです。
バンダイナムコホールディングスは、キャラクター活用力で国内No.1と言えます。ガンダムシリーズ、ドラゴンボールといった大ヒットコンテンツのキャラクターを利用した商品展開が強みです。時価総額は1兆円を超える大型株で、海外売上比率は42%です。
カプコンは、アニメ化されたゲーム作品を多数持っており、なんと海外売上比率は62%で、『モンスターハンター』『バイオハザード』『デビルメイクライ』など、欧米で人気のシリーズがカプコンの作品です。
海外需要を取り込み、存在感を増すアニメ関連企業
アニメ御三家は、優良株ではありますが、すでに時価総額が大きく知名度も高いため、もう少し小粒のアニメ関連企業を見てみましょう。
・まんだらけ(2652)
まずひとつめは、漫画専門の古本屋を運営する
まんだらけ(2652)。時価総額180億円程度の小粒ですが、海外売上比率23%のグローバル企業です。アニメの原画なども販売しており、アニメ好きの外国人にはたまらない品揃えを誇ります。昨年10月にオープンした京都新店は、外国人客で大賑わいです。また、eコマースでは、円安も追い風となっており、売上が拡大しています。興味がある方は、ぜひ公式サイト(
https://www.mandarake.co.jp/index2.html)をのぞいてみてください。独特の世界観に、外国人のみならず惹きつけられるでしょう。
今期2024年9月期の業績は過去最高益を更新予想です。また、5月31日に発表された4月の全店売上高は、累計で前年同期比15.2%増となりました。株価は、2023年1月は200円程度でしたが、現在(2024年6月時点)は500円程度と2倍以上に上昇しています。
・壽屋(7809)
ふたつめは、フィギュアの企画・製造・販売を行う壽屋(7809)です。こちらも時価総額150億円程度と小さめですが、海外売上比率は28%あります。古くは1995年にエヴァンゲリオンの関連版権を取得しフィギュアを自社製品化した功績を持ち、その後はオリジナル商品に注力しています。最近では、中国企業と合弁会社を設立し、中国での販売拡大を虎視眈々と計画しているようです。
今期の業績は、北米市場でフィギュアの競争激化や、原材料高が響き減益予想です。
・アイビス(9343)
ラストは、最初から世界を視野に設計されたお絵描きアプリ「ibisPaint」を運営するアイビス(9343)。上場してまだ1年のヤングな企業ですが、なんと「ibisPaint」のダウンロード数は、世界で4億! 海外でのダウンロード比率は93.2%です。アニメ王国ジャパンが提供するお絵描きアプリということで、Z世代を中心に欧米ではアクティブユーザー数が4年連続1位の快挙を遂げています。今年に入って、株価は急騰しており上場来高値を更新しました。
まとめ
世界から熱いラブコールを受ける日本のアニメですが、懸念点がいくつかあります。
最も深刻なのは、人材不足です。求められる作品数に対してアニメーターなどの技術者が少ないことや、長時間労働といった、労働環境が悪いイメージが強く、新しい人材が集まりにくい状況です。ベテランが若手を育てる時間がないのも問題です。
また、すでに人気のシリーズばかりにビジネスが集中し、オリジナルの新作が生み出しづらいのも鬼門です。長く愛される作品も貴重ですが、新しく世界を惹きつける作品が生まれてこなければ、日本アニメへの関心も薄れてしまいます。
熱い視線が注がれている今こそ、ブレーキを踏まず、アクセル全開で世界へ飛び出してほしいですね。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2024年6月13日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、資本航道株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
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