株式

2024.10.24

「東京メトロ」上場で注目のIPO投資…失敗しないための考え方とは【投資スイッチ! #24】

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本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

キリオフィス代表、株式投資スクール講師、CFP ファイナンシャルプランナー。個人投資
家として2010 年より株式投資をはじめ、5 年で資産を10 倍に増やす。数字オンチの人も
含め普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため、講師、講演者、パーソナルトレ
ーナーとして活動中。講座は特に女性に人気で、毎回キャンセル待ちが出るほど。著書に
「月収15 万円からの株入門 数字オンチのわたしが5 年で資産を10 倍にした方法」「ド文
系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方」(https://www.amazon.
co.jp/dp/B09PB1FT8H/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1)など。
YouTube:藤川里絵の女子株CH 『はじめの一歩』 - YouTube(https://www.youtube.co
m/channel/UCrsiRmd8Bq7CmaXljd8PDKw)

Introduction

10月は久しぶりの大型IPOで、ふだん株式に興味がない人も浮き足立ったのではないでしょうか? 東京在住であれば、ほとんどの人が利用している東京地下鉄、愛称「東京メトロ」が10月23日に上場しました。この原稿を書いているタイミングでは、まだ初値は分かりませんが、公募価格は1,200円に決定し、時価総額7,000億円クラスの超大型IPOとなります。
東京メトロは、東京都区部を中心に9路線からなる地下鉄ネットワークを保有しています。そのほか不動産賃貸や、駅構内の商業施設運営なども行なっています。都民の足として欠かせないインフラなので、事業基盤は盤石です。
上場前から東京メトロ全線で使える株主優待も発表しており、個人投資家へのアピールは強めでした。安定的な「配当」や「優待」を目的に長期保有できるという点で、NISA口座内での投資にも向いているのではないでしょうか。
わたしは普段、IPOに申し込むことは滅多にないのですが、これだけ注目度の高いIPOなので、参加しないのも無粋と思い、抽選に申し込むことにしました。

IPO株の買い方

IPOは、Initial Public Offeringの略語で、日本語では新規公開株式といいます。これは企業が証券取引所に上場し、だれでも自由に株を売買できるようにすることです。つまり東京メトロの株は10月23日以降、誰でも買うことができます。
ただし、一般的にIPO株投資といえば、公募(売り出し)価格で株を買って、上場後すぐに売却することを指すことが多く、投資家の中にはIPO株ばかりを手がけるIPO投資家と呼ばれる人もいます。
IPO株は誰でも買えるわけではありません。というのも、買えるかどうかは抽選で決まるからです。それほどIPO株は人気といえますが、その理由は、かなりの確率で利益を取ることができるからです。
その仕組みを紹介します。
IPO株を買うには、IPOの割り当てがある証券会社に対して、申し込み期間中に申し込みを行います。どこの証券会社に割り当てがあるかどうか、その都度違いますので、確認が必要です。ちなみに東京メトロは大型IPOだったため、割り当て証券会社が多く、野村、SMBC日興、SBI、楽天、岩井、松井、マネックスなど全部で12社ありました。
申し込むには、割り当てられる証券会社の証券口座を持っていて、なおかつ口座に株を買うだけのお金を入れておく必要があります。その上で、申し込みを行い抽選結果を待ちます。
具体的に、わたしが行なった東京メトロの場合のIPO申し込みの手順を紹介します。
東京メトロの割り当て証券会社の中で、証券口座に入金の余力があるSBI証券と、マネックス証券で申し込みを行いました。通常は、主幹事の証券会社がもっとも多くの株を割り当てられるため、当選確率は高くなります。東京メトロの場合は、野村證券が主幹事なので、野村證券で申し込むのがいちばん有利です(わたしは入金されてないため断念)。
申し込むときには、申込み可能な価格帯が仮条件として提示されます。東京メトロの場合は、1,100円から1,200円。この価格帯の範囲内で購入を希望する価格、株数を申告します。証券会社によって、申し込み株数に制限がある場合もあります。
申し込み状況によって、売り出し価格が決まり、当選した人はこの公募価格で買う権利が得られます。東京メトロは、1,200円で公募価格が決まりました。
IPO株投資は、抽選が外れるとチャンスはありません。一方で、抽選に当たった人は、かなりの確率で勝つことができます。というのは、ほとんどのIPO株は、上場した初日の最初につく株価=初値が、公募価格を上回るからです。
ちなみに2023年に上場した96社のうち、初値が公募価格を上回ったのは67社、全体の約70%にあたります。2023年は決してIPOにとって優しい環境ではなかったのですが、それでもこの確率ですから、IPO株投資の魅力がわかります。
とはいえ、IPO株の申し込みは基本的には抽選ですので、運によるところが大きく、こればかりは祈るしかありません。東京メトロは、売り出し株数が290,500,000株と多いこともあって、当選確率はほかのIPOに比べて高いと読んでいましたが、残念ながら外れてしまいました。わたしの周りでも、多くの人が申し込んでいましたが、当選した人の割合は10人にひとりくらいの印象です。よほど申し込みが多かったのでしょう。
ただ、東京メトロの場合は、いわゆる公募価格で買って初値で売るといった短期的なIPO株投資目的ではなく、長期保有したいと思っていたので、上場後によきタイミングで買えればいいと思っています。

初値が公募価格を割る「ハズレIPO株」の特徴

2023年の例でいえば、7割のIPO企業が公募価格以上の初値をつけていますが、逆に言うと、3割の企業は公募価格割れをしています。せっかく抽選で当たっても、公募価格割れなら、損してしまうのでまったく意味がありません。IPO株ならなんでも儲かるというわけではないのです。
初値を割れてしまうIPO株には、以下のような特徴があります。
1.公開規模が1000億円を超えるような大型IPO
たとえば、ソフトバンクのIPOでは、公開規模が2兆6461億円と巨額でしたが、初値が公募価格を2.5%下回っています。
2.企業の業績見通しや成長性に対する投資家の懸念が強い
3.公募価格が企業の実態や市場の評価に比べて高すぎる
4.公募株式の割当が多すぎたり、売り圧力が予想以上に強かったりする場合
このほか、市場環境が悪いときも公募価格割れしやすかったりしますが、これは企業にとってタイミングが悪かったというほかありません。
じつはここ最近のIPO環境はあまりよいとはいえず、9月に上場した企業7社のうち3社、10月に入ってから現時点(10/16)で、上場した4社のうち3社が公募価格割れといった状況です。公募価格割れが続くと、そもそもIPOに申し込む人も減少し、株式市場自体が暗い雰囲気になります。

初値の上昇率が低いほうがよい場合も

IPO株では、初値がいきなりストップ高で、数日間のうちに公募価格の2倍、3倍となるようなスター銘柄もあります。ただし、そういった派手なパフォーマンスを見せた銘柄は、その後、散々なケースがほとんどです。
たとえば、2023年8月30日に上場したインバウンドプラットフォーム(5587)は、公募価格1,850円に対し、初値は2,551円、その日の高値は2,980円と61%も高い株価となりましたが、それが頂点で、そこからは右肩下がりに株価が下がっております。現在の株価は、680円と、公募価格の3分の1程度と切ない限りの状況です。
一方、2023年7月28日に上場したGENDA(9166)は、公募価格1,770円で、初値は1,636円と公募価格を割れていますが、現在の株価(2024年10/16時点)は2,441円。今年の5月31日に1株を2株に株式分割をしていますので、それを勘案すると上場してから株価は約3倍になっています。

抽選に外れても、その後の動向を見守ろう

公募価格で買って、初値で売るIPO株投資は、利益を取りやすいといった意味では魅力的ですが、その企業の成長性に期待や夢を乗せる株式投資のスタイルではありません。ですので、抽選自体はちょっとしたお楽しみ感覚で、本筋はその後の企業の成長を注視し、よきタイミングで売買することだと思います。
初値が高すぎてその後ずるずる下がってしまう銘柄も、きっちり利益が伸びていけば、いずれ見直され、株価が上昇に転じます。自分にとって興味が持てる企業であれば、IPO後もすぐに見放すのではなく、少なくとも1年は見守ることをおすすめします。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2024年10月16日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、資本航道株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
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