本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
Introduction
9月13日に会社四季報秋号が発売されました。わたしの場合は定期購読しているので、前日の夕方に手元へ届きます。そこから一晩で、ざっとひと通り目を通す四季報ナイトを経て、その後はゆっくり記事欄を読み込んでいきます。
今回は、四季報秋号からお宝銘柄を探す方法と、注目テーマについてお話しします。
秋号はじつはいちばんお宝銘柄を発掘しやすい
秋号のいちばんの特長は、ほかの号と比べて、“独自増額”がたくさん出てくることです。“独自増額”というのは、進行中の期の営業利益予想を四季報が独自に増額したということで、記事欄の見出しにもよく使われます。
日本の上場企業は3月決算銘柄が多く、夏号と秋号の間に第1四半期決算を発表します。この数字が好調であれば、通期も強気で見てよいと考えた四季報記者が、会社の上方修正を先回りして増額することが多いのです。
上場企業は、予想が上振れると見通しが立った場合、速やかに開示しなくてはいけません。とはいえ、第1四半期の段階で、計画以上に好調であっても、上方修正に踏み切る企業は実際にはそれほど多くありません。なぜなら、いったん上方修正をしたのに、その後、業績が悪化して予想値に届かなかったり、下方修正したりとなった場合は目も当てられず、投資家からも大ブーイングとなるからです。
ですので、企業の修正発表は、ほぼ確実となるまでお預けです。しかし、四季報には、そんな忖度はなく、第1四半期までの数字が好調で、ほかのファンダメンタルズでも成長余地があれば、独自に増額数字を出してくるというわけです。
そこで秋号での狙い目は、会社予想と四季報予想の乖離が大きいものです。会社はまだ上方修正をしていないけれど、次の第2四半期決算発表のタイミングで、上方修正をする確率が非常に高いといえます。
2024年四季報秋号では、巻頭に今期営業利益乖離率ランキングが掲載されているので、そちらを参考にすると効率よくお宝銘柄が発掘できます。注意点としては、決算期が3月のものからピックアップすること。あくまでも第1四半期決算発表後に、秋号を迎えた銘柄にしぼります。
ランキング上位にあるもので、わたしが気になっているものをいくつか紹介しましょう。
乖離率ランキング11位:ホクト(1379)
ブナシメジ、エリンギなどキノコを生産販売している会社です。25年3月期の会社が発表している営業利益予想は33.1億円ですが、四季報予想は45億円、乖離率36%です。好調の理由は、出足の野菜市況高でブナシメジなどキノコ販価が計画を上回り、計画上の利ザヤを稼ぐと記事欄に書かれています。さらに読み進めると、「キノコ生産工程で用いる独自容器の技術に着眼、全国展開する洗剤や乳製品メーカー開拓」とあります。わたしは、シメジ工場でアルバイトをしていたことがあるのですが、たしかにキノコは独自の容器に入っています。あれを洗剤などに利用するというのはとってもおもしろいですね。
乖離率ランキング24位:名糖産業(2207)
チョコレートやバウムクーヘンなどお菓子の製造会社。25年3月期の会社の営業利益予想は8億円で、四季報予想は10億円、乖離率は25%。「主力のチョコなど菓子の値上げが奏功し想定超」と記事欄に書かれています。今回の秋号では、「値上げ」というワードが多く登場しており、値上げによって利益率が改善された企業が目立ちますが、名糖産業もそのうちの1社。「たい焼き型チョコ菓子35周年販促施策実施。応募者に記念グッズ贈呈」というのも、たい焼きチョコファンとしては気になるところ。
乖離率ランキング32位:ハピネット(7552)
おもちゃの卸会社で、カプセルトイの専門店なども運営しています。25年3月期の会社の営業利益予想は78億円で、四季報予想は95億円、乖離率は21.8%。北海道に旅行に行った際、商店街のあちらこちらにカプセルトイの専門店があり、海外旅行者で賑わっていました。じつは会社の営業利益予想78億円は、前期の実績86.7億円から減益予想となっていますが、もし四季報予想に寄せてくるとすれば、増益に逆転します。減益から増益のインパクトは、株価にもそれなりの影響がありそうです。
特集企画の四半期進捗率にも注目!
四季報では毎号特集企画が組まれており、この秋号では四半期進捗率が掲載されています。
これは、会社発表の通期営業利益予想に対する、直近に発表された四半期の進捗度合いで、過去3期分の平均進捗率も掲載されています。過去平均に比べて今期の進捗率が高いと、上方修正期待が膨らみます。
たとえば東映アニメーション(4816)の過去3期平均進捗率は15.6%で、今期は33.4%。過去平均に比べると17.8%も進捗率が高くなっています。わたしの経験上、5%以上平均から離れていると上方修正する確率が高くなりますので、ぜひ特集企画欄も併せてチェックしてください。
秋号で目立ったテーマは「コラボ」
記事欄に目を通して、やたらと多く感じたのは「コラボ」です。ご存知の通り、コラボ(コラボレーション)とは、異なる組織が協力して新たなものを作り出すことを言います。とくに目立ったのは、日本のお家芸であるアニメとのコラボです。
創建エース(1757):イベントはアニメ業界とコラボ展開
サーティワンアイス(2268):アニメとのコラボ商品投入
鉄人化HLD(2404):オリジナル楽曲の配信やアニメとのコラボに積極的
くら寿司(2695):人気アニメなどとのコラボが奏功し客足堅調
なとり(2922):夏季限定でアニメ『クレヨンしんちゃん』のコラボ商品を投入
ホットランド(3196):主力の銀だこは『鬼滅の刃』などアニメコラボで客足絶好調
ほぼ日(3560):22年に漫画『ONEPIECE』コラボ手帳投入
ディー・エル・イー(3686):企業とのコラボアニメやCM制作は採算よく、注力領域
ワンダープラネット(4199):海洋冒険譚RPG『パンドランド』は『ドラえもん』とコラボ実施
OSGコーポ(6757):高級食パンは、人気アニメとコラボした期間限定商品などで需要喚起
パイロットコーポレーション(7846):欧州で市場活性化狙い、『NARUTO -ナルト』とのコラボ「フリクション」を発売
ナガホリ(8139):テレビアニメ『ONEPIECE』25周年コラボ小判も投入
日本KFCH LD(9873): 注力するモバイルオーダーはアニメなどとのコラボで使用率増
アニメの力は偉大ですね。コラボするとおおむね業績は上向いているようです。
アニメ以外でも、おもしろい組み合わせのコラボはあります。
靴下の製造販売会社タビオ(2668)はFCバロセロナとのコラボ商品で集客をし、売り上げが伸びています。爆弾ハンバーグが目玉のフライングガーデン(3317)は、映画『ラストマイル』公開記念コラボメニューを全店で期間限定投入するそう。靴の通販「ロコンド」を運営するジェイドグループ(3558)は、B’zの稲葉浩志氏とリーボックでコラボスニーカーを展開とあります。
こういったコラボ作戦が想定超に好評であれば、上方修正となることも期待できます。興味があれば、実際にお店に行ったり、商品を購入したりするのもおもしろいですね。
四季報の記事欄を読むと、今回の「コラボ」のように、世間で流行っている現象をキャッチすることができます。秋の夜長に、四季報を読んでみてはいかがでしょう?
※本記事に掲載されている全ての情報は、2024年9月18日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、資本航道株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
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