本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
Introduction
8月5日(月)、日経平均株価は-4,451円の大暴落で、令和のブラックマンデーといわれました。ご存知ブラックマンデーとは、1987年10月19日の月曜日に起こった、ニューヨーク株式市場の大暴落のことです。この日、ダウ工業株30種平均は、1日の取引で508ドル(22.6%)下落しました。8月5日の日経平均株価は、1日で12.4%の下落ですので、まさに令和のブラックマンデーです。
そんなこともあり、投資家にとってブラックがつく日は、どうしてもネガティブな印象を持たざるを得ません。ところがここ数年、ブラックデーでありながら、投資家にとっても心躍るイベントがあります。それは、感謝祭(11月の第4木曜日)の翌金曜日を指す「ブラックフライデー」です。
なぜなら、ブラックフライデーの前後から、世界各国で大規模なセールが行われるため、流通・小売店にとっては、まさにおいしい商機になるからです。もちろん消費者としても、普段から狙っていたものがお安く買えるかもしれないチャンスですから、注目しないわけにはいきません。
ブラックフライデー・サイバーマンデーとは
もともとブラックフライデーは、米フィラデルフィアの警察が、感謝祭後の買い物客による混雑を「ブラックフライデー」と呼んだことが始まりだそうです。当初は、どちらかというと否定的な意味合いでしたが、1980年代に入り、小売業者が「赤字から黒字に転換する日」という肯定的な解釈を広め、1980年代以降、全米規模でのセールイベントとして定着しています。
プラックフライデーに続いて、感謝祭の翌週の月曜日は、サイバーマンデーと呼ばれるオンラインセールが行われます。サイバーという名のとおり、オンラインショッピングに特化したセールイベントですが、最近はブラックフライデーもオンラインでの売り上げが伸びていることにより、この境界が曖昧になっています。そこで、「BFCM(Black Friday , Cyber Monday)」と呼ぶこともあります。
いずれにしろブラックフライデーを皮切りに、一年の中でももっとも稼ぎどきの年末商戦がスタートします。その売上によって、消費動向が把握できますので、株式市場にとっても重要なイベントです。
BFCMを通じて見る各国の消費動向
まずアメリカでは、トランプ大統領が当選した直後ですので、米国民が新大統領によって経済がどう変わると考えているかを知る絶好の機会になります。もし今後、よくなると期待していれば、お財布のヒモが緩み、BFCMは盛り上がるでしょうし、不安を持っていれば、お財布のヒモをキュッと締めて、盛り上がりに欠けるでしょう。
オンラインショッピングが主軸となりつつある、中国の動向も気になります。コロナ以降、なかなか景気が回復しない状況で、政府が大規模な景気対策を打ち出しています。その実利を国民が感じているかどうか、まずはBFCMの結果で見ることができそうです。
そして、日本はどうかといいますと、米中ほどブラックフライデーという言葉が定着していないようにも感じます。と言いつつ、つい先ほど、とあるオンラインショップからブラックフライデーセール開始の案内が届き、ポチってしまったところなので、知らず知らず商戦に乗せられているのかもしれません。
日本では、大手を中心に賃金上昇が浸透しております。年末のボーナスを見込んで、耐久消費財など大きなお買い物をする人がいるかもしれません。一方で、最近の景気ウォッチャー調査では、連続で消費者マインドは低下しており、賃金が上がった人と、そうでない人の二極化が進んでいるのかもしれません。
いずれにしろ、BFCMが盛り上がれば、年末に向けて株価上昇のドライバーとなってくれるかもしれません。トランプ氏の就任が決まって以降、米株は最高値更新しておりますが、日経平均株価は、いまいち乗り切れておらずモタついています。トランプ政権による悪影響がどれくらいあるのか、投資家は戦々恐々としている状況ですが、それを打破できるかどうか期待したいところです。
日本でBFCMセールを実施する企業は?
では、日本でBFCMセールを実施する予定の企業はというと
・エービーシー・マート(2670)
・パン・パシフィック・インターナショナルHD(7532)
・イオン(8267)
・ヤマダホールディングス(9831)
・しまむら(8227)
・三越伊勢丹ホールディングス(3099)
・ワールド(3612)
・楽天グループ(4755)
・日本航空(9201)
これらの企業は、そこそこ規模が大きいため、BFCMの影響がどれだけ業績に寄与し、さらには株価を押し上げるか予想するのはなかなか難しいところがあります。ただ、今期もともと業績が好調で、波に乗っているところであれば、BFCMがさらに追い風となって、上方修正も視野に入ります。
その候補となりそうな企業を独断でピックアップしてみました。
まずは、第2四半期決算発表のタイミングで、通期予想を上方修正したエービーシ-・マート(2670)。今期は、2期連続の過去最高益を更新予想となっています。
エービーシ-・マートは、コロナ前に、インバウンド需要の恩恵を受けた企業のひとつですが、コロナ後は、さらにそこを超えてきているのが素晴らしい。都内にもエービーシー・マートはたくさんありますが、渋谷などの繁華街では外国人さんも多く、非常に賑わっています。下半期は売り場面積の拡大や、韓国、米国でも好調な売上を見越して上方修正をしたということなので、BFCMも期待できそうです。
次に、パン・パシフィック・インターナショナルHD(7532)です。企業名だとピンと来ないかもしれませんが、「ドンキホーテ」といえばわかりますね。最近は、利益率の高いPB商品に力を入れており、たとえば「色褪せ知らずの黒シリーズ」といった、まったく色落ちしない黒シリーズの衣料品など、ドンキならではの視点で開発された商品が人気となっています。
もちろん、あの独特のディスプレイは海外からのお客様も大喜び。先日訪れた六本木のドンキは、外国人さんで賑わっていました。
そして、まさかのブルーノ・マーズがCMに登場したことでも話題に。BFCMでも何かワクワクするような仕掛けがあるかもしれません。こちらも業績は、今期営業利益が最高益を更新予想。海外展開も着々と進めており、世界のDONKIと認識される日も近いかもしれません。
最後は、しまむら(8227)です。かつては”シマラー”という流行語が生まれたほど大流行したしまむらですが、eコマースへの取り組みが遅れたことで、業績が伸び悩みました。ここ数年は自社ECに注力し、最近はECで注文したものを店舗で受け取り、その際に追加で何点か買っていくという消費行動が目立つそうです。しまむらは、今期で4期連続過去最高益更新予想となります。
3社とも、株価チャートは週足できれいな上昇トレンドを継続しています。BFCMでコケなければ、このまま上昇が続きそうです。
今年は投資家の視点からもBFCMを楽しんで
事前にBFCMによる業績の寄与を予想するのはむずかしいですが、実際に店舗を回ったり、サイトの売れ筋などを確認するとよいですね。また、11月の月次売上をチェックして、決算発表より先回りしてBFCMの成果を確認するのもオススメです。
BFCMは消費者としても楽しみなイベントですが、投資家としての視点を持てば、さらに楽しくなりそうです。ぜひ今年は投資脳を働かせつつ、お買い物を楽しんでください。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2024年11月18日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、資本航道株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
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